高級すし店に学ぶ、エンジニアの仕事術
高級すし店に行ったことがあるだろうか。たいていの場合、メニューは存在しない。
「おまかせでお願いします」と伝えると、店主が旬のネタを選び、客に合わせた順番で握ってくれる。
気づけば腹も心も満たされ、「やっぱりプロは違うな」と唸らされる。
これこそが職人の仕事だと感じる瞬間だ。
システム開発も、実はこれと似ているのではないか。
顧客から細かい仕様をすべて聞き取って、その通りに作るだけではただの作業員。
本当にできるエンジニアは、顧客が言語化できていない課題を察知し、期待以上の成果を提供する。
この記事では、そんな「お任せ力」をテーマに、顧客満足を超える開発術を考えていこう。
注文通りに作るだけでは一流になれない
結論から言えば、本当にできるエンジニアは顧客の注文をそのまま聞かない。
もちろん耳を塞いでいるわけではない。
顧客の言葉の裏側にある「本当に解決したいこと」を読み取り、
時には仕様を修正し、時には全く違う解決策を提案する。
その結果、顧客は「想像以上のものができた」と満足する。
逆に言えば、言われたとおりに作るだけなら、コストが安い若手や海外のオフショアに置き換えられる。
35歳以降も現役で活躍したいなら、「注文の奥にある意図を汲む力」こそが生き残りの鍵になる。
お任せ力を支える3つの要素
1. 顧客の意図を見抜く洞察力
高級すし店の店主は、客の表情、服装、会話のテンションからその日の気分を読み取る。
エンジニアも同じだ。顧客が「CSVで出力したい」と言ったとき、
それが本当にCSVなのか、あるいはダッシュボードでリアルタイムに見たいだけなのかを見抜けるかどうかが勝負だ。
2. 技術と経験の引き出し
「任せてください」と言う以上は、提案できるだけの技術と経験が必要だ。
AWSを使った方が良いのか、オンプレでいくべきか、
スケーラビリティやセキュリティの観点も含めて最適解を提示できる力が求められる。
これは単なる知識ではなく、現場で培った判断基準だ。
つまり、コードを書くだけの時期にも、常に「なぜこの設計なのか」を考える習慣をつけておく必要がある。
3. 信頼関係を築くコミュニケーション
お任せが成立する最大の理由は、顧客が職人を信頼しているからだ。
開発でも同じで、進捗報告や中間レビューをこまめに行い、
「任せても大丈夫」と思わせることが重要だ。
逆に、何も報告せずに納品時にドーンと出しても、
顧客が「イメージと違う」と言えばすべてやり直しになる。
お任せは放置ではない。
信頼を積み重ねながら、顧客を安心させるプロセスも含めて仕事なのだ。
高級すし職人の思考をシステム開発に応用する
| すし職人 | エンジニア |
|---|---|
| 旬のネタを選ぶ | 最新かつ最適な技術スタックを選定する |
| 客の好みを察する | 顧客の本当の課題を理解する |
| 一貫ごとに味を調整 | 開発途中でフィードバックを取り込み調整する |
| 驚きと感動を提供 | 想定外の価値や便利さを提供する |
こうして比べると、「すし職人の仕事術」が開発現場でもそのまま通用することが分かる。
顧客が気づいていない問題を先回りして解決することで、満足度は格段に高まる。
まとめ:次の案件で試してみよう
要点を整理しよう。
- 本当にできるエンジニアは顧客の注文を鵜呑みにしない
- 顧客の意図を読み取り、より良い解決策を提案する
- お任せを成立させるには、技術力・経験・信頼構築が不可欠
次の案件では、顧客の言葉の裏にある本当のニーズを探ってみよう。
単なる「仕様通りのシステム」ではなく、顧客が思わず唸る成果物を提供できれば、
あなたはただのプログラマーではなく、「職人エンジニア」だ。


